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明野照葉    「愛しいひと」(文春文庫)

明野さんにはめずらしくホラー、サスペンスでなく家族再生物語。

夫が突然失踪。息子直也も大学入学とともに家をでて、アパート暮らし。そのアパートを直也は飛び出て、大学にも行かず、行方知れずになる。主人公の母親である睦子は途方にくれる。
 睦子は世間体を気にして自分の途方にくれる姿や、夫の失踪について周囲や親族に嘘をつきとうそうとするが、それが限界に達し、食うためには働かざるを得ないと意を決して、専業主婦二十年からの脱皮を決意、社会へ出てゆく姿はよく描けているとは思う。

 しかし、一流企業の昨日までバリバリの営業部長である夫瞭平が、一夜にして突然ホームレスにまでなってしまうという設定が世の中にはありえない。例えば、何かのアクシデントが襲われ記憶喪失となり、今自分がどこにいるかもわからなくなる、自分の名前さえわからなくなるというような設定なら理解できるのだが。

 瞭平の場合、帰宅途中突然家にかえりたくなくなり、カプセルホテルに寝泊まりして会社に通うが、会社へも行くのがいやになり、ホームレスになる。会社での失敗や、家族とのトラブルも何もないのである。

 記憶喪失になるどころか、 会社で頑張っていて成果をあげたことも追憶しているし、妻や息子のこともいつも心配して頭の中にある。

 こういう人はとてもホームレスになるとは思えない。
ホームレスは、今がいやになっただけでなる人はいない。なるだけの背景や原因が必ずある。
 そこを掘り起こして物語を紡がないと、表面的お遊び小説になってしまう。

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