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明野照葉     「海鳴」(文春文庫)

 明野さんは不思議な作家だ。これまでに読んできた作品は、動機、背景がありえない突拍子もない作品ばかりで、なかなか作品に入り込めなかったのだが、この作品はその欠点は解消、物語の運びもしっかりしている。

 主人公良枝は、歌手を目指しながら、銀座のクラブで歌を歌って暮らしを立てていた。あるとき、闇のお金を、付き合っていたやくざの下っ端の男江木とかすめ取る。江木はそのことが発覚し、暴力団に召し取られ行方不明になる。良枝は、すべての罪を江木にかぶせて、省一という男と鎌倉へ逃げ、彼と所帯を持ち鎌倉で暮らす。

 良枝の子供恵に、とんでもない歌の能力があることを良枝が知り、やめとけばいいのに、どうしても恵を歌手にしたくて、恵とともに東京に再びでてゆく。

 歌手になるためには、莫大な先行投資がいる。結果良枝は、以前の東京での闇の人間関係に縋らざるをえなくなり、危険に近付くことになる。

 恵が売れ始めるに従い、良枝が昔の怪しげな人間たちの輪のなかに入ってゆき、危険と不安がどんどん増してくる展開。
 これは結構面白い。どうなるだろうと読み進む。

 ところが、話は突然、良枝が鎌倉に帰り、家族に温かく迎えられ、家族とはいいものだで終わる。
 何なのだ。これだけ気をもたせてきたのに、とんでもない肩透かし。明野さんはこの物語では今度は結末で失敗している。全く奇妙な作家である。

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| 古本読書日記 | 22:26 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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