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小川洋子 「妊娠カレンダー」

「妊娠カレンダー」
芥川賞受賞作だそうな。あとがきで作者が、
「自分の経験を描いた作品か? と質問されるたび、がっくりする。
 わたしの妊娠体験なんて、何の書かれるべき要素も含んでいない」
と書いています。
タイトルの通り、各所に日付が入っていて、出産までのカウントダウンを思わせますが、赤ん坊の存在があまり感じられない。
妊娠の経過をつづった、エッセイみたいな作品ではありません。
語り手が赤ん坊を、染色体としてイメージしているのは、なかなか面白いですね。

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「ドミトリィ」
天井に広がる染みは、血に違いない! 
両手と片足がない芋虫みたいな寮の管理人は、青髭のごとく若い男の死体を並べて隠しているんだ!!
……と盛り上げておき、意外なところに話が着地します。
そういえば、「寡黙な死骸~」も、この話も、冷蔵庫の中で死んだ男の子の事件が登場します。
実際に似たような事件があって、作者に強い印象を与えたんでしょうかね。

「夕暮れの給食室と雨のプール」
回想がメインで、特に大きな事件が起こるわけでもない話です。
給食室で、ポテトサラダに使うジャガイモをおばさんが長靴で踏みつぶしていたという描写がある。
『給食のトラウマ』が、残さず食べることを強要されて苦しかったとか、鶏をしめる現場を見てしまったとかではなく、
「合体・発酵・変性するにおい」「いくつも重なりあうゴム長靴の底の模様」というあたり、作者はセンスが良いと思います。

3篇の共通点として、登場人物たちが準備をしていないというところがあります。
出産への準備、夫が暮らすスウェーデンへ移住するための準備、新居や結婚式の準備。
3つ目の話に出てくる女性はそれなりに動いていますが、夫とのやり取りが電報というあたり、もたついている気はする。
期限がはっきりしているのに、みんな澱んだ時間の中にいるわけです。

| 日記 | 20:44 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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