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井上荒野     「結婚」(角川文庫)

 この作品、結婚詐欺師古海に篭絡されてゆく女性を描くが、ここから見えるのは、現代の中年女性の気風である。独身であれ、浮気であれ、恋愛すること、肉体関係になることの敷居が低くなっていることだ。

 浮気と言えば小説の題材で書かれる80%は男の浮気で、それに怒り冷えた心持になるのは女性というのが通例。女性の浮気は、かなり敷居が高く、肉体関係になるまでに時間がかかったり、その関係になった後は、後悔にさいなまれたり、どこか暗いうら寂しいトーンに彩られる。特に男性作家の描く大人の男女の恋愛は殆どがこの暗いトーン一筋。

 しかし、家庭に不満があることなど関係なく、今や女性、たとえ主婦であっても、出会った瞬間に魅かれた男性に、誘われればついて行くことはめずらしくなく、肉体を求められれば、それに応じることはそんなに異例なことではないようだ。

 ただ、この作品によれば、男から捨てられるというのは女性はプライドが許さない。或は、自分に限り捨てられるということはありえないと信じる傾向があり、客観的にみればだまされていることは明白なのだが、あの人に限りそんなことはないと信じ、いつまでも待ち続けるし、時には、ストーカーまがいに捨てた男を追い続ける。

 既成概念にとらわれた伝統的恋愛作品より、井上さんが描く乾いた現代の恋愛状況をもっともっと読んでみたい。

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| 古本読書日記 | 06:39 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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