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稲葉真弓   「唇に小さな春を」(小学館文庫)

街中にポッカリと不思議に開いていた土地に、安普請の我が家を建てたのはバブル絶頂期のころ。だからもう建ててから30年近くにもなる我が家である。人生の中で最も長く過ごした家であるのに、何となくまだ自分の家の気がしない。新建材に囲まれ,スレート葺きの少し洋風の家はなんだか仮の住まいである。

 やっぱし、自分の住まいは田舎の育った実家である。屋根はトタンか安瓦。瓦がとばないように石の重しが敷いてある。エアコンは無い。ふすまやガラス戸を開けはなつと、風が絶え間なくふきぬける。すいかを頬張る、冬は夥しい数の氷柱が下がる縁側。

 どうしても、まだ自分の住む家、住んでいる家は故郷の家。今は旅の途中のような想いがする。

 そんな家も今は取り壊されて更地になったまま。そういえば、私の部落では空家、廃屋ばかりになってしまった。

 廃屋に似合うのは、時が止った柱時計と、住んでいた人が出て行った年の黄ばんだカレンダー。

そんなセピア色の風景が広がる稲葉さんの作品であった。

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| 古本読書日記 | 06:35 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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