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島田雅彦    「ニッチを探して」(新潮文庫)

 私の会社でも、資材部の部長をして、その後重役までなった人が、材料購入時に購入単価を上乗せさせ、それをキックバックさせそのお金で自宅を建てたと怪文書を流された。あまり皆に好かれておらず、顔つきもよくなかったのでその重役ならさもありなんとみんな思った。

 銀行は金が動く。支店長くらいになると、過剰融資をして、融資先からお金をキックバックさせることなど、罪の概念は微塵もなく、当たり前の事としてやる人などいっぱいいるのだろうとつい思ってしまう。

 こういう工作は、支店長一人ではできない。だから数人が協力して秘密裡に行う。その数人は、支店長を信頼する人が行う。そして幾何かの分け前を支店長より頂戴し、その代わりに不正を絶対ばらさないことを誓わせられる。

 ところがまれにその数人のなかに、清らかな性質が他のどんな性格より勝るひとがいて、悩みながらも、不正を汚いとして、行動を起こす人がいる。刃向かい散る人もいるが、この主人公のように、不正、腐敗がはびこる世界に嫌気をさし、別世界に飛翔しようとする人もいる。

 自分は支店長に強制され不正に加担しているので、銀行から告発を受けるかもしれない。
だから、身を隠そう。そんな想いから、ホームレスの世界へ飛び込む。

 よく、生活保護制度もあるのだから、何故にホームレスなんかになってしまうのかわからないという人がいる。或は、世のしがらみから離れ自由を謳歌しホームレス世界こそ楽しい世界なのではなんてとんでもない発想をする人もいる。

 ホームレスはそれどころではなく、生き抜くには結構厳しい。何よりも、生活保護を受けることができないどこかに疚しさを抱えている人たちの最後の身を隠す場所になっている。指名手配者の多くがホームレス生活をしながら逃亡する。だから、ホームレスになりすましている捜査員が数人いつもいる。

 この作品の圧巻なところは、まるで作者島田がホームレスを経験したことがあるのではないかと思われるほどに、微細に、生き生きとホームレス社会を描いているところである。

 ユーモアもあり、なるほどと感心もし、主人公道長と一緒になってしばし、ホームレス生活を読者は楽しむことができる。

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| 古本読書日記 | 06:29 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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