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山口瞳   「青雲の志について」(集英社文庫)

 会社にいたころ、わが社の社長の友だちのサントリーの専務の依頼ということで、テーマは忘れたが、サントリーのある部長の訪問に私が対応したことがあった。テーマを忘れたというのは、その訪問者に驚いてしまったからである。部長だから、何十人も部下を抱えているだろう。しかしやってきたのは部長とほとんど新人の可愛い20代前半の女性社員だったから。しかもこの女性社員は部長と友達のようなタメ口。それをうれしそうに聞いている部長。いったいこの人たちは何なのだ。サントリーとはどんな会社なのだ。唖然とした。

 作者山口瞳はサントリー宣伝部社員。彼が社員になったときの上司というかよき相談相手が同じ宣伝部に働いていた小説家開高健。

 だいたい作家というのは、当初はどこかの会社で働いていて、仕事の傍ら小説を書き、それが日の目をみて、これで作家で独り立ちできると確信すると会社をおさらばする。いつか会社をとびだし、小説家として一本立ちすることを目標として頑張るのが普通である。

 ところが、山口も開高も、超売れっ子作家になっても、サントリー社員を辞めず続けている。許すサントリーもすごいが、生活に全く心配がないのにサントリーで働き続ける2人の作家も不思議極まりない。
 先に紹介した、部長さんと新人社員の関係、2人の作家の社員継続。サントリーの懐の深さというかめちゃくちゃぶり」はどこからくるのか。

 山口はこの作品でそれを解き明かそうとしているが、これこそそうだというものは無かった。

 しかしヒントらしきものはある。サントリー創業者は鳥井信治郎。彼の参謀が作田耕三。この作田が筋金いりのマルキスト、非合法共産党員。どうして2人が結びついたか知らないが、作田の思想の敵はまさに鳥井のような経営者。この、2人が二人三脚で今のサントリーを創ってゆく。そういえば、サントリーには確か労働組合が無い。闘争こそ命の共産党員作田がいてもだ。ここに鳥井というかサントリーの懐の深さを感じざるを得ない。

 それから、面白いのは、鳥井はサントリーにいて、ウィスキー、ビールなどお酒は絶対飲まなかった。お酒を吟味するには、舌、嗅覚が最も大切。アルコールはそれらを鈍らせるからだ。

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| 古本読書日記 | 06:24 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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