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中町信    「模倣の殺意」(創元推理文庫)

 これは、真っ当な正統派推理小説である。今は、社会派推理か、軽めのライト推理小説しか目にしなくなったので、今どきこんな正統派推理小説を書く作家はめずらしいと思い、少し中町さんのことを調べたら、なんと1935年生まれ、ということは80歳を超えている、びっくりした。それで、なるほど確かにこの推理小説を書けたわけだと納得した。

 この小説にも書いてあるが、名前は思い出せないが有名な推理小説作家が「探偵が犯人になるくらいの超突飛な作品を書かないとだめだ」と言った言葉を、辣腕編集次長に語らせている。多分中町さん自身も言われたのではと想像する。それならみていろとこの作品を書いたように思う。

 この作品はびっくりするのが、犯人である美人女性編集者があたかも事件真相追及者のようにして冒頭から登場する。真相を追及するかのように、富山までそれも2回もでむき事件の真相らしきものを暴く。とても、犯人とは読者は想像もできない。

 それからトリックが凝りに凝っている。坂井正夫という同性同名の新人推理作家が一年前と今年の7月7日7時に密室で死んでいる。一年前は自殺、今年は自殺にみせかけた密室殺人である。

 更に、一年前に死んだ坂井正夫は四方温泉で「7月7日7時」という作品を書いているが、彼の重い障害を持った幼子が重体になったとの病院からの連絡を受け、原稿を持って旅館を後にしたのだが、下書きノートを旅館に忘れる。このノートを旅館で間違えて、一年後に殺されるもう一人の坂井正夫に返送したことがもうひとつのトリックに使われる。
 幼子の死は自殺した坂井正夫が病院で医師のいないときに殺す。それで、坂井正夫は世をはかなんで自宅であるアパートで自殺する。

 とにかく、これでもかと重層的に仕掛けや、トリックがそれほど不自然にならず差し入れられる。読んでいてクラクラしてくる。
 そして最後にそっと密室殺人のトリックを一行で作者中町は片付けている。さりげなさの裏に中町「どうだまいったか」と含み笑いをしている姿が浮かんでくる。

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| 古本読書日記 | 06:16 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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