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湊かなえ    「望郷」(文春文庫)

 湊さんは、特別な発想力を持っているわけではないから、テーマはどの作品もありふれている。ただ、かかげたテーマを異常にデフォルメしえげつなさをだす才能にはたけている。

 この短編集、まず閉塞感の提示が強烈。女の子は欲しくない子供だ。だから育てることや、教育にお金などかけてはいけない。長男には金をかける。いい大学もだしてやる。しかし女の子は世間体があるから、自宅から通える大学にはだしてやるが、卒業したら帰ってきて両親の面倒をみる。

 閉塞した島で生きることで何より大切なことは、摩擦を起こさず無事に生涯を生き抜くこと。こんな島で殺人事件が起こしたら、起こした一家一族は大変なことになる。普通は島をでてゆくものだが、湊さんはそこで生きさせ、塗炭の苦しみを忍従につぐ忍従で生き抜かせる。
 閉塞した島で、島の掟に従って生き結婚した夫婦。新幹線に乗ったこともない。ましてディズニーランドへ行くなど宇宙へ行くのと同じ感覚。
 今どきそんな場所、いくら島といってもあるわけないじゃんと思うのだが、デフォルメさせるために、物語の登場人物をそういう環境、条件に押し込め、これでもかと苦しめる。

 苛めもこの短編集で湊さんは扱っている。苛めはあまたの本で取り上げられている。だから目新しくないし、湊さんの視点も発想もそれほどのものはない。ただ、被害者が苛めをされて苦しんでいるといくら言っても、加害者と両親は絶対いじめていないと主張して譲らない。こんなことは現場ではよくあるのだろう。しかし加害者と被害者の間にたって、行き詰まり落ちてゆく教師の姿が痛々しい。

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| 古本読書日記 | 06:41 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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