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野中柊    「小春日和」(文春文庫)

 タイトルからして、穏やかで暖かな癒し系の物語と思ったら、まあそんなこともないわけではないが、双子の少女が主人公で名前が姉が小春、妹が日和とちょっと肩すかしを食らった。

 小春と日和は母のすすめでタップダンスを習う。それがきっかけで、テレビコマーシャルにでる。そのコマーシャルが評判を呼び、第2弾もでき放映される。

 この時の双子姉妹の憧れであり、影響を受けたのが、当時そろそろ引退の準備をしていた双子の歌手ザ・ピーナッツ。それは、父と母の青春時代の大スター。色々あるのだが、何かある度に姉妹がみんなの前で披露するのはザ・ピーナッツの歌と、ともに踊るタップダンス。

 姉妹には、色んなプロダクションから誘いがあるが、両親が、特に父が反対してすべてを断る。それがどうも両親のいざこざにつながっている。姉妹もそんなこともあり、芸能界に進むことを逡巡する。

 そんな時、父のインド転勤が決まる。父は家族のために、みんなを連れてゆくと言う。母は家族のために残ると言う。そして、父は母に負け一人インドへ旅立つ。ここで言う家族というのは子供である姉妹のことと生まれたばかりの長男道太郎のことを指す。子供が何よりも家族にとっては大切に思えるよう作者野中さんは描く。

 そしてびっくりするのは、1年が過ぎたところで、母が宣言する。「道太郎を連れてインドで父と暮らす」と。

 ここが素晴らしく私には迫ってくる。母にとって、一番大切な家族は子供たちでは無く、お父さんであること。夫であること。
そして、残された姉妹も別に僻むことなく、自分たちの今と未来を両親とは離れて考える。
 タップをやって一流のダンサーになろうと。

 読みやすいが、実に言葉を選び抜いて、質の高い小説に仕上がっている。 

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