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熊谷達也   「氷結の森」(文春文庫)

森シリーズ三部作の完結編だそうだ。しかし、内容とトーンは前2作とは大分異なり面食らう。

 この作品は昭和初めのシベリアが舞台。日露戦争に出兵したマタギの主人公矢一郎が、戦争から帰還すると、妻は別の男の子を身ごもっていた。それを苦にして、矢一郎は故郷を離れシベリアに渡る。妻は妊娠相手の松岡と心中をはかり死ぬ。それを恨みに思った松岡の弟辰治が矢一朗を追うという昔のテレビドラマ「逃亡者」のような設定。
そして真岡のニシン漁や、敷香でのトドマツの伐採などを転々として、氷結した間宮海峡をこえ、最後はロシアのニコラエフスクにたどり着く。
 それは、真岡で世話になり、お金を借りた香代にお金を返さねばならい一念で、ニコラエフスクに来ているという香代に会うためだ。

 この作品を読むと、今日本人がだれもしらないロシアの都市に、たくさんの日本人が生活していたことがわかる。貧乏に苦しみ、そこからの脱出のため膨大な日本人たちが、ハワイにアメリカに、ロシアに、中国にでていったことがわかる。日本人のグローバル化は、部分的ではあるが今より進んでいたのではないかと思う。

 多分事実であろうが、共産革命中のロシアの革命軍に小さな町に住む日本人700人が殺されたという場面は衝撃的である。

 この作品が残念なのは、主人公矢一郎の心が澄みきっていて、正義感が強いスーパーマンであるところ。もう少し、影がある人間を創造してほしかった。700人が虐殺されても、彼だけは生き残る。他の森シリーズのマタギとして悩む姿がこの矢一郎には無い。そこがつまらない。

 ハードボイルド小説として割り切って読めば、面白かもしれない。

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| 古本読書日記 | 06:04 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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