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いしいしんじ    「ポーの話」(新潮文庫)

いしい独特の世界が広がる不思議な物語だ。

うなぎ女たちのなかで生まれ、育てられ、それから地上にあがり、人間世界とからみあうポーといううなぎのようであり、人間のような少年の物語。

 当然なのだが、ポーは心や頭脳は真っ白けの状態で物語はスタートする。まずうなぎ女たちの母親としての愛情に接する。そして、人間世界にはいりこみ、川やら環境を汚す、人間たちのわがままな生き様をみる。それから、メリーゴーランドとひまし油(名前)の葛藤や兄弟愛などもしる。メリーゴーランドの窃盗癖を知り、自分も窃盗にいそしむ。まあ、我々から見れば悪である。
 その他、ゴミ屋との出会いで家族愛を見、優しさ、恩などを見る。
そして、色んな言葉や知識も併せて知る。

 しかし、ポーはちっともそれにより成長したり、人間的に深くならないのである。見たりまねたりするが、それが自分の血とか肉になっていかず、なんともノッペラボーなのである。
 形だけの存在、それがいっこうに意志をもって変化しない。

何か梨木香歩の「ピスタチオ」の世界を彷彿とさせる。人間は、大きな生命体の一部の機能を果たしているのにすぎない。自分は意識的、無意識的に行動する。それは個々の人間をとれば、バラバラであり、そんな行動は無秩序でひょっとすれば奇跡のように見えるかもしれないが、行動や考えは生命体により創られ、その生命体の秩序のなかで行動しているだけ。
 生命体のなかをグルグル輪廻しているだけ。

この本を読むと、人間があの蟻の隊群が一定方向に向かってせっせと動いている姿に見えてくる。

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| 古本読書日記 | 09:18 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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