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明野照葉    「澪つくし」(文春文庫)

 最近は「大人の週末」などと言って、会社生活と休日のオンとオフをすぱっと切り替えができるひとが、優雅な人生を送ることができるような喧伝がなされている。

 この短編集のなかの「ジェリーフィッシュ」に強烈な言葉がある。
佐島という多分湘南海岸のどこかなのだろうが、ここにヨットは高額すぎるのでディンキーを共同で持って、夏などのシーズン週末に海へでる大人の仲間たちがいる。係留しておくだけで年間70万円。それにいろんな費用がかさみ100万円以上の経費がかかる。だから何人かで共同で所有するということになる。
 色んな経過があって、ディンキーに乗せてもらって東京に帰る車の中で、主人公にたいし恋人の瑛子が言う。これが本質をついていてじつにきつく鋭い。

 「カッコばっか。ぼくたちはヨットやってます。普段はまっとうな企業人ですが、シーズンの週末は仲間たちと佐島でヨット遊びを楽しんでいます。・・・・・あんたたちは歪んでいるのよ。だから本橋さんちのひなびた離れを借りたり、東京にいるときは絶対立ち寄らない小汚い店で朝ごはんを食べている。僕たちはヨットを持っています。いえいえ別に贅沢な遊びじゃありません。だってこんなに不便や苦労を背負ってやっているうですから。ただ海にでている一瞬がほしくてね・・・」

 ただただ、世間や他人がどう見ているかだけがヨット仲間たちの基準。そこにすべての気使いをする。会社でも、自分がどう見られ、どう評価されるかだけで必死に行動する。
 「大人の週末」どころでは無い。オン、オフどころではない。これではオン、オンである。

 こんな人たちほど心が折れやすい。

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| 古本読書日記 | 06:48 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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