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庄野潤三    「せきれい」(文春文庫)

  庄野の名作「夕べの雲」。一般的には、穏やかで暖かい理想的な家庭の風景が描かれている素敵な作品と評価されている。確かにその通りだし、庄野も「どうだいい家庭だろう」と誇らしげに描いている。

 しかし、どうも私はひねくれているのか、ざわざわ心がしてしかたがなかった。丘のの上に建てられた新興住宅地の家。確かに家の中は暖かいかもしれないが、ゆっくり眼差しを引いてみると、丘下の家からはどこかはみ出しているし、庄野流のありかたについてこれる人だけを存在として認めてやるという少し厚顔不遜の香りがあり、どことなく孤立して寒々しい雰囲気がする家がみえてくる。

 庄野の80歳を少し超えてのエッセイを続けて3冊この本も含め読んだが、暖かく、ゆっくりと動く日々の変化が見事に書かれ感心するが、どうにも「夕べの雲」を読んだときのざわつきが消えない。

 とにかく、何かにつけ、長男、次男の家族が庄野の家にやってくる。さらに、隣家の清水さんと巨人のピッチャーだった藤城さん一家との交流だけが熱く描かれる。
 その描かれ方は、とにかく、貰い物と、それに対するお返しの話ばかり。そして、孫を中心とした、貰い物へのお礼の手紙をうれしそうに公開する。
 何かどこか息苦しい。庄野からみれば当然かもしれないが、長男、次男一家は、何だか庄野一家への忠心を争っているようにみえる。贈ったり贈られたりする品物も、他家といつも比較したりされたりしているようで緊張が絶えない。礼状もだすのが当然だし、中味も通り一遍の内容ではいけない。何がどんなふうに良かったのか(悪かったことは書いてはいけない)必ず書かれていなければならない。

 暖かさ、優しさの裏側にどこか言いしれない冷たさ、緊張が覗く。

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| 古本読書日記 | 06:47 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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