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長野まゆみ   「カルトローレ」(新潮文庫)

私が学生のころマルクス主義、共産主義が全盛のころだった。
理屈はよくわからないが、革命につぐ革命の果てに地上の楽園のように思える、共産国家が実現する。その完成された共産国を描いているような感覚をこの小説では持った。

 広大な砂地が拡がるどこかアラビアのようなところが究極の地。
まず、お金というものが登場しない。お金がなければ生活ができないということは無い。ゆったりと流れる穏やかな生活が保証されている。
 お金が無いから、稼ぐための労働をする必要が無い。主人公がせねばならいことは、この地に来る前、天空を船で彷徨っていたとき、誰かが書いたという日記、109冊分を翻訳すること。これがいつまでにという期限が無い。それどころか、すべてのページ、この日記空白なのである。

 物語には、たくさんの人たちが登場する。しかし人々の間に尊敬もなければ、嫉妬、愛情、恨みなど我々の世界にあるような一般的感情は無い。だから争いや戦争など毛頭ない。
 よく言えば善人しかいないように見えるが、単に個性のないのっぺらぼうだけがいるようにも思える。

 期限がない趣味のようなことをしながら一日を過ごす。刺繍をしたり翻訳をしたり。のっぺらぼうたちの物語だから、あまりこれという場面が作れない。だから、やたらに、食事をしたり、コーヒーを飲んだりする場面が多い。

 こんな長野さんが描く世界に今の人たちが放りこまれたら、順応できるだろうか。私はぐうたら人間だから適応したい希望を持つけど。

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| 古本読書日記 | 06:08 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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