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川上未映子  「わたくし率 イン歯―、又は世界」(講談社文庫)

お互いに顔をあわせる。そこで顔はわかったように思うのだが、少しすると、耳は目はどうだったのだろうとなんとなく印象がぼんやりとしてきてしまう。その点、奥歯ははっきりしている。
 そう奥歯こそ私である。奥歯こそ人間そのものである。だから、恋人だと思っている青木に手紙を書いて、出会ったら、私は私自身である奥歯を青木にみせる。それで、青木が私を恋しているのなら、口をおおきくあけて奥歯をみせてくれ。そして、私の口に顔さら入ってきてくれ。そしたら舌で青木をのせて、愛しあうのだ。

 青木がまったく私を相手にしない。それでも青木が好きだから、青木のアパートにゆく。奥歯をみせあうどころか、青木にはこんなやつ知らないと言われるし、見知らぬ女が青木といて、木っ端みじんにののしられ馬鹿にされる。
 そしてショックで、次の日歯医者にゆき、私自身である、思い出も、言葉も、感情もすべてが入っている奥歯をそれも麻酔無しで抜いてもらう。

 そのとき、奥歯が発する言葉や、青木となど何もなく、中学生のころこっぴどくいじめられた記憶がほとばしり出る。それが、強烈で、さらに悲しく切ない。

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| 古本読書日記 | 06:19 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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