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朝井まかて   「恋歌」(講談社文庫)

朝井の直木賞受賞作。樋口一葉の師匠として有名で、萩の舎を開いた女流歌人中島歌子の波乱に富んだ半生を描く。

 尊王攘夷という思想は水戸藩から生まれた。その思想に従い、佐幕派の井伊直弼を殺害した「桜田門外の変」は有名。その水戸藩、幕末は藩内が天狗党と諸生党の二つに割れ、幕末の大乱のときには、内乱で藩は乱れ、国家建設に貢献することはなかった。

 この小説を読むと、薩長から、綺羅星のごとく明治維新で活躍した人材を輩出し、その人材により維新がなしとげられたように普通は語られるが、その源は人材というよりお金の力なのだと思ってしまう。
 薩摩藩も長州藩も、幕府の統制がきかなくなったとき、英国や近隣諸国と交易を成し、莫大なお金を稼いだ。その、お金を湯水のごとく使い、幕府を倒し、明治政府での権力を握った。

 当時幕府も金がなくピーピーしていた。水戸藩は驚いたのだが、通常殆どの藩が年貢は4分6分だったのに、逆に6分4分だった。質素倹約を藩是としていたが、農民庶民は大変な窮乏を強いられていた。今世界で内乱が起こる国は貧乏国だ。金がない藩が国の変革に関わることはできない。
 もうひとつ、この作品でどきっとしたのは、主人公の歌子が天狗党反乱を起こした夫の妻子として牢獄に他の反乱者とともに投獄されて、その投獄者が次々殺されていくところ。

 「牢番と首切役人は昨夜の女郎どうであったなどと耳をおおいたくなるような話の合間に入牢舎の躰を引き据え長刀を振り下ろす。」

 人殺しが、工場の機械作業のようになっている。ここを想像で書いた朝井に脅威を覚える。

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| 古本読書日記 | 06:41 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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