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中上健次   「十九歳のジェイコブ」(角川文庫)

 この作品は1986年出版された。中上は、「水の女」「化粧」くらいまでは凄かったが、その後は停滞していた。停滞に入ってから、ずいぶんたってこの作品は書かれている。

 中上の作品の根底にあるのが路地。その路地に集まっている家は、被差別部落。そこでの動物と同じような、本能むきだしの生活、人間模様の描くことが中上の特徴だった。
 その路地が、開発により破壊され、路地部落の人々は高度成長社会のなかに放りだされた。この放りだされるまでを描いている時は、中上の筆はさえにさえた。でも、描き切ったところで、中上文学は終わったように思える。

 放り出された人々のその後が書けなかった。この作品は、それに挑戦している。
しかし、主人公をジェイコブとするなど登場人物名をカナ文字にしたところに彼の苦悩がある。熊野の土着性の生業を描いてきたのに、カナ文字は中上の本質からかけはなれている。しかも、安直に物語の背景にジャズを差し挟んで内容の薄さをごまかそうとしている。それでも、そこから新しい視野が開けるのかと思って読み進んだが、やっぱり最後は紀伊の本能生活回想に戻ってしまった。

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