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冲方丁     「もらい泣き」(集英社文庫)

父は教師、だから厳しく娘に接した。何しろ父はパジャマにアイロンを常にかける人だった。家のなかはいつも緊張の糸がはりつめていて、娘には息苦しい日々の連続だった。だから、父を心底嫌った。口もまともに聞けなかった。何をしても、 「おまえはきちんとしない。」「なぜきちんとできないんだ。」ときつく叱られた。
 そんな家がいやで、高校を終えると、家を飛び出した。演技の道に進もうとした。それが上手くはいかなかったが、今はバンドをマネイジする会社を起こし、自由に楽しく仕事をしている。
 何年かして、家に帰った。父と接触したくなかったので、泊まっていけという母の言葉をさえぎって家をでようとしたところに、普段は残業で帰宅が遅い父が帰ってきた。ぎこちない会話のあと、「仕事があるから帰る」というと、父が「腹が減るだろうからこれもってけ」と包みを渡してくれる。
 アパートについて包みをあける。シュークリームが3つ。父は母と娘と3人で食べるつもりで買ってきたことを知る。娘が久しぶりで帰ってくるので、早く帰宅したことを知る。

 厳しく無口な父のこの上ない暖かさが伝わってくる作品である。

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| 古本読書日記 | 13:01 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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