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佐藤多佳子  「神様がくれた指」(新潮文庫)

この作品の魅力の第一は、匠、一流職人としてのスリである辻の実際のスリ行為のリアルさ、迫真のせまる表現にある。
 しかし、私は、タロット占い師の昼間薫に強いシンパシーを感じる。
薫は頭もよく、エリート街道につながる道をひたはしっていたのに、途中でギャンブルにはまり、その借金を返すために、女装までしてインチキとわかっている占い師になる。
 時々、どこで間違えたかと深いため息をつく。そこが、私の胸にズシンと響く。

「ふとため息が漏れた。ため息ひとつごとに寿命が一日減るのだということを聞いたことがあるが本当だろうか。過ぎ去った時間というのは、何故すっきりと消去されないのだろう。今という時を積み重ね、一日一日新しい時が加わるたびに古い時は砂のように風化してゆき、一年、二年、五年、厚くおおいかぶさった砂地を安全な忘却とみなしてとぼとぼと歩いているのに、思いがけない突風で砂丘の地形が変わってしまう。埋めてきた昔の景色が一瞬にして現れる。」

本当に全くその通りだよ。

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| 古本読書日記 | 13:22 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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