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宮部みゆき   「魔術はささやく」(新潮文庫)

うまく評価ができない。とにかくとんでもない作品である。他の作家では、ここまでの内容の作品を組み上げることは殆ど不可能である。
 バラバラに3人の女性が自殺か事故で死ぬ。更に、もう一人同じように男が死ぬ。主人公守の育ての父親は、タクシー運転手をしている。死んだ女性のうち一人はその父親がひき殺している。父親が、過失で轢いたのか、それとも女性が無理やり車に飛び込んできたのか。それにより父親の罪に天と地の差がでる。守は何かに導かれるように、事件の真相に迫ってゆく。
 そして亡くなった女性たちが「恋人商法」という詐欺商法をしていたこと、そしてアングラ雑誌のライターで亡くなった男が、「恋人商法」の実態を暴く座談会を亡くなった女性ともう一人の女性を集めて行っていたことを知る。
 亡くなった女性3人、まだ殺されていない女性一人を含め、4人とライターとのつながりを守がつきとめる過程はスリルがあり面白い。更に、それぞれが自殺や事故で死んだようにみせかけていくが、それは殺しとしてどういう手段で実現したのかを、読者の関心として集中させる。それが催眠術によるものと知り、この作品はそれだけでも十分読み応えがある作品になっている。
 ところが作品には別のキーワードが挟まれている。それは、守の役所勤めの本当の父親が突然失踪。しかも、失踪後、役所の金を横領した事実が判明。父は全く失踪後の行方がわからない。更に、育ての親のひき殺しについて、突然、女性が車に飛び込んでゆくのを目撃したという人間が、事故後大分たってからあらわれたこと。
 これらが、女性たちの死と絡み合って、とんでもない真実が最後に明らかにおされる。2重、3重のサスペンスが一つの物語に不自然でなくはめ込まれている。
 宮部の非凡な才能を持つ作家である。

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| 古本読書日記 | 15:26 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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