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乃南アサ   「しゃぼん玉」(新潮文庫)

乃南アサ   「しゃぼん玉」(新潮文庫)
乃南の素晴らしさは、心の動きを、その時の背景、聞こえるざわめきや何かの音とシンクロナイズさせ、鮮やかに描きだすところである。主人公伊豆見翔人の心の情景、うつろいの表現は、どこを切り出しても読者をうならせる。
 この物語の舞台は、宮崎県の山の中、ど田舎である椎葉村。そこに、ひったくりを繰り返し逃げながら行き場を失った主人公翔人が行き着いたところから物語が始まる。
 現在は都会を脱出した人たちによる、いかに田舎、里山が素晴らしいかという田舎賛歌の小説が多い。
作家自身が田舎を素晴らしいと思っていなくても、自然の豊かさ、村人の暖かさ、絆が強い人間らしさという刷り込みに引きずられ、つい田舎はいいところと筆がすべってしまう。
 ところが、乃南は、田舎の良さ、悪さ、どちらに偏ることも無くありのまま描写する。
 青春時代は後から振り返ると、輝いていたようにも思えるが、だいたいは暇をもてあまし、だらだらと退屈極まる日々を過ごしていたのが実態だ。そして、これはいけないと夜中に明日からパチスロ通いをやめ、新しい人生をスタートさせるのだと決意する。しかし、何故だろう、朝のまどろみのなかでは必ず、めんどうくせえなと思い、昼近くまで眠り、またパチスロへ行く。それが嵩じると、生活の金に窮する。すると、通常はバイトでも探すかとなるが、翔人のようにひったくりを繰り返し、底辺におちてゆく。
 この物語はそれを断ち切る人生再生物語である。でも、本当に再生できたか、私にはかなり疑わしく思える。

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