FC2ブログ

PREV | PAGE-SELECT | NEXT

≫ EDIT

乃南アサ    「涙」(下)(新潮文庫)

乃南アサ    「涙」(下)(新潮文庫)
東京オリンピック前後、その時出来上がった新幹線は、革命的交通手段だった。それでも、東京と大阪沿線以外の多数の地方都市は東京からは遠かった。大阪から以西の年に、東京からやってくると、そんな遠くからよくと海外からやって来たように言われた。
 だから沖縄は本当に遠かったし、当時は日本ではなかった。この作品で知ってびっくりしたのだが東京オリンピック当時は、沖縄へ東京からの便は、週2便しかなかった。
 当時私が住んでいた山国でも、テレビはカラー時代に入っていた。それでも少し奥まった山間の村では電波が届かないということで、テレビが映らない村があった。この物語で宮古島が同じだったことを知り、そんな村のあったことを思い出した。
 この物語の第6章「涙」、作者は渾身の力をそそぎ書いている。台風の接近、直撃がBGMとなり、緊張感を増幅させている。
 しかし、この物語はそのクライマックスの高まりを作者があげればあげるほど、私は白けた気分になった。2つの点が引っ掛かる。
 一つは、寺瀬という悪のリーダーが伸二や部下を使って物語の根幹をなす、のぶ子を何故暴行し、殺さねばならなかったのかが理解できないこと。寺瀬という男は、悪知恵にたけ、狡猾な人間として書かれている。のぶ子を殺しても、それ以上のメリットがあるのか、狡猾な人間はそんな危険をおかすわけがないと私は思う。つまり動機が希薄すぎるのである。
 もう一点は、萄子が日本あちこち、勝の消息をたずね歩き回る。それほど裕福とは思われない萄子の家族。どこから、こんな昭和30年代から40年はじめにかけ、お金が生まれてくるのかが、当時の貧乏風景と重ね合わせるととても奇妙にうつる。

ランキングに参加しています。
ぽちっと応援していただければ幸いです。
にほんブログ村 本ブログ 読書日記へ


| 古本読書日記 | 14:57 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

COMMENT














PREV | PAGE-SELECT | NEXT