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小田実  「アボジを踏む」(講談社文芸文庫)

この作品を読んでえっと思った。阪神淡路大震災のことが書かれていたから。小田実は随分前に亡くなっていて、震災のときはすでにこの世にはいなかったと思っていたからだ。
 年譜をみると彼が亡くなったのは2007年、8年前。しかも今生きていても85歳とそれほどおかしくない年齢なのだ。この作品も震災後に創られている。
 小田はこの小説にでてくるアボジ(韓国語の父親)、の末娘と結婚している。
アボジは韓国済州島生まれ。日韓併合のときに生まれている。済州島では食っていけないのでアボジは日本にやってきて、同じ済州島生まれで日本に稼ぎにやってきていた海女のオモニと結婚する。オモニは韓国語で母親。
 戦前、戦中、戦後、アボジもオモニもとてつもない苦労をしてきた。何しろハングルであれ、日本語であれ読み書きができないのだから。小田は直接的にその苦労は描かないが、ユーモアを織り込んだ彼らとの会話から、じわりと染み出るように苦労を描いている。物語クライマックス手前、アボジは肺癌で余命半年といわれて病院に入院する。
 一日だけ外泊が許され、アボジは我が家に帰る。そこで阪神淡路大震災にあい家の下敷きにアボジはなるが、近所の人たちに助けられる。しかし、病院には帰ることができない。病院は今にも死ぬかもしれない人々が次々かつぎこまれているから。
 しかたなく点滴棒をもちながら、被災者と一緒にたき火を囲み配給のバナナを食べながら凌ぐ。その時のアボジの言葉が突き刺さる。
「土方も人夫も担ぎやも闇商売、荷役もやったし、警察にもつかまり留置場にいれられたけど、このくらしは一番ひどい」

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| 古本読書日記 | 15:04 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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