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五十嵐貴久   「誰でもよかった」(幻冬舎文庫)

高橋という若者が、渋谷の交差点で、無差別に11人の通行人を刺し殺す。そのまま、逃げて近くのボヘミアンという喫茶店に客や店長を人質にとってたてこもる。
 人質たてこもり小説は吐いて捨てるほどある。だいたいは長い間、犯人と警察の膠着状態が続く。そして、最後は狙撃部隊が登場して、犯人が外へ出た瞬間に犯人を打ち殺して物語は終わる。物語の展開にあまり幅が無い。そして、この物語も、全く思っていた通りの結末で終わる。
 しかし、五十嵐は少し違った視点で物語を描こうとしたふしが見受けられる。それは、高橋という犯人が、何故無差別に殺人を起こそうとしたのか。その背景、動機を追及しようとしている。銀行に押し入っているぞとメールスレッドを犯人がたてる。しかし、誰もフォローもしない。ひょっとすればスレッドが誰にも読まれていないのではという寂寞感を覚えている。結構面白い動機だと感じた。
 しかし、残念なのだが、この寂寞感が伴う動機を掘り下げず、警察と犯人の交渉だけがだらだらと続いてしまう作品となっている。既存の平凡な人質たてこもり作品と変わらない。
 新しい視点の芽生えがあっただけに残念だ。

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| 古本読書日記 | 16:20 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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