山田太一 「見なれた町に風が吹く」(中公文庫)
私たちは、本を読んだり、映画、テレビを見たりして、これを自分はやりたかったのだということを見つけ、実際にやってみることがある。それで、稀に、そのことをつきつめてやり続ける人もいるが、大概は、途中で投げる。そして、また何かに触発されて、ちょっと挑戦してまたやめる。そんなことを繰り返しているうちに、それがさしあたりに変わる。さしあたりこれでもやってみようか。そして、そのさしあたりも年月が経るにしたがってなくなってしまう。
この作品に登場する杉山さん。もともとは大部屋に属していた大根役者。とても俳優で生きていけることはできない。その杉山さん、奥さんに才覚があったのか、若い頃から小金を投資しながら土地を買う。知らないうちにその土地が値上がりし数億円の金になった。
ふと、自分を大根役者とののしり馬鹿にしていた映画監督関根を監督にして死ぬ前に映画を作りたいと思いつく。そして、人生の最後に最高傑作を作ってほしいと関根監督に情熱をこめて語る。
関根監督はその杉山の顔、眼をみて「彼の顔には死相がでている。すぐ死ぬのでは」という。杉山は73歳、年相応の体が痛んでいるところはあるが、検査の結果は健康との判断がでた。それでも、関根は「彼は生きていない。」と主張する。
関根は知っていた。杉山は、小金がたまったし、とりあえず映画でも作ってみようかと思っただけ。それが名作でも、駄作でもよかった。さしあたり、そんなことでもして生きてみようかと思っただけなのだ。その「さしあたり」が眼に顔に現れていると。
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| 古本読書日記 | 16:09 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑