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山田太一   「路上のボールペン」(新潮文庫)

私の若い頃は、電話は貴重な機械だった。携帯電話などもちろん無いし、電話はあいちらこちらには無かった。アパートや寮では、電話がかかってくると大家さんや電話当番から呼び出しがかかった。
 だから、人と会話するには会うしかなかった。そして、会話を埋め合わせるためにやたら手紙を書いた。
 飲み屋であれこれ友と議論をする。明け方近くにその余韻が冷めやらない中、それぞれの住処に帰る。それから議論したりなかったことや、言いたかったことを懸命に手紙にして書くのである。やりとりをたくさんして、その間に居酒屋で会って議論するのである。
 好きな子がいて、デートをするが、言いたいことを言えないで、気まずく別れる。それでやめとけばいいのに、自分の思い、言いたかったことを懸命に手紙にして書く。そしてひたすら返事を待つ。時に大家さんに手紙きてない?と尋ねる。
 でも必ずと言っていいほど、そんなときの手紙の返事は来ない。

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| 古本読書日記 | 15:51 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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