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山田風太郎   「黒衣の聖母」(ハルキ文庫)

戦争直後の東京が印象的に描写されている。
赤旗を振り、共産党がリードする皇居での「食料の配給を増やせ」「天皇制打倒」のデモ行進。数百人がどっと湧き出てくる浮浪児の群れ、乞食。座席が壊され、窓ガラスが全くないすし詰めの汽車。観客席がなく総立ちで映画をみる映画館。そしてあちらこちらに屯しているパンパンという名の街娼。
 主人公は学徒出陣で動員され南の島から帰還した男。日本に帰ったら許嫁だったマチ子は、東京大空襲で亡くなってしまっていた。それに衝撃を受け、毎日葡萄酒にアルコールをまぜた壜をポケットにしのばせ、それをあおりながら酔い狂って街を放浪する。
 そんなときマチ子に面影が似ている街娼に会う。街娼などかって拾ったことなどなかったが、美人で清楚な姿と医大生であるということに魅かれて、彼女に連れられて行った屋根裏部屋で、抱き合う。
 そんなことを毎日繰り返したある日、屋根裏部屋で抱き合っているときの彼女の姿をみたくて暗闇の中でマッチを擦る。その姿は焼けただれた野獣のように醜かった。驚き、暗闇の中で頸を締めて彼女を殺してしまう。
 翌日の新聞に美人医大生が首を絞め殺され、しかも女性は処女であったとの記事がでる。
一体あの野獣のような容貌。いや確かに天使のような医大生であったはずの街娼。あれは妖怪だったのか。謎解きは最後に書かれるが、戦争の悲しさがにじみでている作品である。

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| 古本読書日記 | 15:15 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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