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沢木耕太郎  「貧乏だけど贅沢」(文春文庫)

沢木耕太郎  「貧乏だけど贅沢」(文春文庫)
信頼し合える人、話していて胸襟が開ける人物同士が、飾らず会話をするとこうなるのかという対談に出会った。沢木耕太郎と高倉健の素晴らしい対談である。
 渥美清が亡くなっても、高倉健が亡くなっても、しゃしゃりでてくるのは監督の山田洋次。
彼の弔辞や思い出話を聞いていると、渥美、高倉と山田洋次の間に偏見かもしれないが、大きなすきま風が吹いていたように感じてならない。山田洋次のこれ以上ないような思い込みすぎの話はどこか浮ついている。
 高倉健は鶴田浩二とのコンビで東映任侠シリーズのスターとなった。多いときは年間15本も任侠映画をこのコンビで撮っていた。巷間われていることだが、これでは生涯ヤクザを演じることになってしまうと危機感を覚えた高倉が、独立プロをつくり、任侠から脱出、「新幹線大爆破」を撮る。それからは年一作とか数年に一作ベースで芸術、文学を映画化した作品に絞り出演するようになる。「八甲田山」「幸せの黄色いハンカチ」「駅」「ポッポ屋」「南極物語」など。
 そういった芸術路線にひたはしっているとき、沢木が聞く。「今どんな役をやってみたか?」と。高倉健が答える。「ヤクザです。もしくはテキヤです。」と。
 この対談を読むとその高倉の想いがわかる。そしてその通りだよなと感じる。
山田洋次などにより床の間に飾られてしまった健さん。そんな不自由で身動きとれない健さんに、死ぬ前に頸木から解放されて、目いっぱいやくざを演じてほしかった..。この対談を読んでしみじみ思った。

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