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沢木耕太郎  「危機の宰相」(魁星出版)

沢木耕太郎  「危機の宰相」(魁星出版)
最近は高度成長時代を、あの時代は良かった。右肩上がりが続く、誰がリーダーをやっても成功した時代だった。こんな風に冷ややかに総括。或は、日本人の持つ努力、勤勉さが高度成長を実現させたと、日本人全体への評価につなげる論が殆ど。
 しかし本当にそうだっただろうか。
戦後から昭和34年くらいまでは、とにかく資本家、企業家と労働側の対立は激しかった。ストライキは日常の風景だった。総評は過激だった。そこに安保闘争が加わり、反体制の運動は頂点に達し、明日にでも革命がおきそうな雰囲気になった。経済学ではマルクス経済学が最も学ばれた。
 もし、その時、社会党や共産党が政権を担っていたら、本当に高経済成長はあっただろうか。
当時、日本では官僚や経済学者の間では、日本経済二重構造論が喧伝されていた。資本主義と前近代的経済が混在していて、まず前近代経済構造を改革しないと、経済発展にはつながらないという考えがある。或は、総需要と供給を均衡させバランスのとれた経済運営をする。マルクス経済学を別にすれば、この2つの論が主流であった。
 下村治は孤高とした経済学者であった。過去の統計を調べ上げ、日本は高度経済を実現する基礎はできている。需要より供給を多くすれば、需要はそれにつれ拡大するはずであると。
 この孤高の理論に、岸首相の後の首相池田勇人は乗っかった。
 そして高度成長を実現させた」。
 そういう意味では池田はもっと評価されるべき宰相である。

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| 古本読書日記 | 17:04 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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