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中島京子   「小さいおうち」(文春文庫)

中島京子   「小さいおうち」(文春文庫)
本になるのかわからない。出版社の編集者の女性の勧めで、タキは自分の昭和初期から昭和19年まで、東京で女中として過ごした時代を書き始める。それを、健史という青年が読む。そしてタキを時々叱る。この日は2.26事件が起きた日じゃないか。もっと世の中は物騒で暗かったはずだ。この日は真珠湾攻撃した日で日本は沸き返ったはず。この日はガダルカナルが陥落した日。皆戦争の恐怖や不安をだんだん感じてきた日じゃないのかと。
 戦前、戦中は妻というもの、夫をたてて一歩下がって暮らすもの。だから、男は戦争についてあれこれ御託を言うが、妻は直接戦争を身近に感じることは少ない。ましてタキは女中。
 社会の喧噪、戦争はかすみか曇りガラスの向こうにある。ひたすら、時子奥様、旦那様、息子の恭二様に仕えることがすべて。掃除をして、洗濯をして、食事を作って。そして時に奥様と一緒に銀座にでて大好きなカレーを食べて。
 女中という視点から、社会、戦争をみるとこうなるということを実に印象的に描いている。戦争よりも、奥様の不倫のほうが心配だし、恭二の小児マヒの手当のほうが大事。
 しかし、曇りガラスの向こうの戦争とは無関係ではいられない。時々、戦争が顔をのぞかせる。そのとき、読者はグっと切なく悲しくなる。良い作品である。

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| 古本読書日記 | 06:12 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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