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篠田節子  「贋作師」(講談社文庫)

篠田節子  「贋作師」(講談社文庫)
これはなかなか凄い作品である。
権力、権勢欲、色欲に凝り固まった老人大画家がいる。娘よりも年下の女性をわが物にして結婚までする。この大作家が首つり自殺をしたとして亡くなる。彼の家から大量の未発表作品が見つかる。それを修復する成美がこの作品の主人公。
 成美が奇怪に思ったのは大量の絵。いくらなんでも年老いた作家がこんなに大量の絵を若い女性と結婚後に作成できるわけがない。それでよく絵をみると、これが彼女の元を去って、大画家のもとに去った恋人の描いた絵とわかる。つまり大画家は贋作者に絵を描かせて、
それを自分の作品として売り膨大な金を得ようとしていた。だから、大画家は自殺ではなくこれを相続して大儲けしようと企んでいた奴に殺されたことが最後のほうでわかる。
 主人公は、何としても大量の作品が、大画家の作品ではなく元恋人の作品であることを美術界に認めさせようと奮闘する。しかし、美術界も金欲の世界で、ぶつかる壁は厚い。
 最後の修復家と大画家を殺した犯人たちとの格闘の場面は迫真に迫ってすさまじい。
そこらのハードボイルド作家の作品を遥かに凌ぐ。
 色金欲。伏魔殿のような美術界。それにからめとられた人、人、人。そのなかで捨て去られていく能力ある若き芸術家。そこに色んな事件が絡まり、重層的な作品になっている。

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