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吉村昭   「蚤と爆弾」(文春文庫)

吉村昭   「蚤と爆弾」(文春文庫)
戦前から戦争中にかけ、満州ハルピン南方の原野で、曽根中将率いる部隊が、敵国捕虜を人体実験に使い、ペスト菌、チフス菌を使った細菌兵器開発をしていた。そして、中国を中心に、その兵器を使い、細菌を散布し、ペスト伝染病をあちこちで引き起こし蔓延させていた。
 しかし戦況悪化とともにソ連軍が満州国境を越えて、ハルピンに進軍してくる。そのため細菌開発所は、焼き尽くし、部隊にいた3000人は、個々ばらばらになり、日本に引き揚げてくる。細菌兵器開発とその使用は国際法違反であり、それが発覚すれば、戦争犯罪人となり死刑は免れえない。そこで3000人は、絶対秘密を守り、目立たずひっそりと暮らすことが求められた。万が一見つかった場合、細菌兵器開発の秘密を守るために、満州引き揚げ時、青酸カリが配られ、その青酸カリを飲んで自死することが命令されていた。
 東京へ進駐してきたアメリカ進駐軍及びソ連代表部は、細菌開発の全貌を把握するため、力を注いだが、情報をつかまえることができなかった。そこに、帝国銀行で青酸カリを使った、行員大量殺人事件が起きた。青酸カリは一般人は入手できない。それで、細菌開発を行った人間の中に犯人がいると考えられ、進駐軍は捜査をする。
 細菌兵器開発については多くの作家により作品にされている。しかし、他の戦争文学は残虐性、悲劇性を異常にデフォルメし、結果リアリティに欠け、読むと白けてしまうことが殆ど。吉村は客観的に淡々と開発と散布の過程を描く。そこに真実が浮かび上がり、読者には戦争の恐ろしさがひたひたと心に沈殿してゆく。

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| 古本読書日記 | 06:07 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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