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よしもとばなな「スウィート ヒアアフター」(幻冬舎文庫)

よしもとばなな「スウィート ヒアアフター」(幻冬舎文庫)
そこには、空虚、虚脱しかなかった。それがおこったときは逃げることに必死だったし、助かることに必死だった。だけど、その必死が通り過ぎたら、魂の抜けた自分と、愛する人を失った虚しさと、なにもかもが無くなってしまった荒れた土地だけが目の前に広がっていた。
 空虚は、そのことがあった土地に住んでいた人だけでなく、遠くその土地を離れた人たちの心にも宿った。起きたことが想像をこえていたため、その土地の人達はどのように対峙していいか全くわからなかった。はかりしれない大きな溝が起きた土地の人たちと遠くの人たちとの間に横たわってしまった。
 でも、時間がたつにつれ、溝が少しづつ溶け合い、まじりあって、失った魂をとりもどしてゆく。
 死ぬことは遠いことだと思っていたが、それは並んですぐ横を一緒に走っていることを知った。だから、今を強く生きてゆこうと思う。新しく知り合った人たちと。それこそが失ってしまった愛する人への慰霊のあかしだ。
 小さい物語だが、よしもとは懸命に輝く言葉を探して、心に響く作品を書き上げた。
大震災後の今を、よしもとは強く、そして温かくみつめて描いている。いい作品である。

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| 古本読書日記 | 06:45 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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