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桐野夏生  「メタボラ」(文春文庫)

桐野夏生  「メタボラ」(文春文庫)
メタボラってどういう意味かと思って調べてみたら「新陳代謝」ということだった。でも、この物語では変わり目または生まれ変わる出来事と言ったほうがよりピタっとくる。
 主人公の香月雄太にとっては、集団自殺から生き残り脱出したとき。友達のジェイクにとっては山奥の強制収容所みたいな「独立塾」から脱出に成功したとき。このときこそ人生は変わったように思うし、まさに変わり目だったはずだ。
 格差社会といわれる。しかし、この作品は格差社会からも対象とされない人々がいることを教えてくれる。世界をあてどなく放浪している人たちがいる。最初は、自分探しだとか、社会の枠からはなれ自由を謳歌するなどと息巻いてはいるが、どこへ行っても、底辺の宿を徘徊、底辺の人々と交わることしかできない。そうこうするうちに、社会と隔絶され、ひたすら放浪するしかなくなる。旅は帰る場所があるから旅と言う。放浪には帰る場所がない。放浪は死人と同じ状況である。
 格差社会の対象になるひとは、放浪の空しさに気付き、社会に復帰するか、少なくとも帰れる家がある人を言う。
 この作品は、人生の変わり目にであったように見えることが、帰る場所のない人にとっては単なる錯覚であることを読者に教えてくれる。

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| 古本読書日記 | 06:18 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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