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谷村志穂  「尋ね人」(新潮文庫)

谷村志穂  「尋ね人」(新潮文庫)
谷村は今の時代、ちゃんとした物語を創り上げることができる貴重な作家である。
昭和20年代、30年代に生まれた人たちは、自分の両親が恋愛をしていたということはなかなか想像がつかない。それも何回もしていたなどということはとても想像できない。
 今でもそういうことは多少あるが、金持ちや大地主の人が、長屋住まいの人と結婚するなどとうことも想像がつかないできごとであった。
 末期癌で余命いくばくもない、奈緒の母親美月から「死ぬ前に、生涯で一番好きだった人と最後に会いたい」と懇願される。奈緒も、東京で恋人に捨てられ、失意のうちに故郷函館の母のもとに帰ってきたばかり。それにしても、自分の母が父とは別に、もっと好きだった恋人がいて、大恋愛をしていたこと、更にずっとその人を思い続けていたことに驚く。
 母は貧乏な家の出。恋人は仙台の大地主でかつ東北大学の学生。母は彼との結婚を信じるが、だいたいこういう時は男が日和る。そして男が突然消える。その突然が、母には理解不能なできごと、そして今の父と結婚しても、突然の男の失踪を引きずり、まだ彼はどこかで
生きているのではと思い続ける。
 母は、あきらめきれず失踪された直後に仙台の彼の家を訪ねる。そこでとんでもないことを知るとともに、本当に彼が失踪している事実を知る。一方彼は、母とは結婚できないと母との恋を捨てようとしてはみたものの、諦めきれず家を飛び出て、流浪をはじめる。
 そして彼は2年後に函館の町を訪れ、母が今の父と結婚していることを知り愕然とする。この母と彼とのすれちがいが50年を経て共鳴しあって、鮮やかな最後を紡ぎだす。

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