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森絵都  「この女」(文春文庫)

森絵都  「この女」(文春文庫)
昔、メキシコから日本に仕事できた日系2世の人と会話をした。彼の両親は日系1世だから当然日本人。だから彼も容姿は全く日本人。家では日本語で会話をする。しかし外ではスペイン語。日本語の喋りは全く日本人と変わりない。
 この人がもう日本には来たくないという。例えばローカル線で電車に乗る。料金表の駅名はすべて日本語。これが全く読めないから、○○駅まで料金はいくらかと近くの日本人に聞く。聞かれた日本人はびっくりするとともに、この人頭がおかしいのではと思い怪訝な顔をする。
 この作品の主人公礼司。まだ22歳なのに、何で釜ヶ崎のドヤ街まで人生を落とさねばならなかったしっくりとこなかった。だいたいドヤ街の住人は中年から老人しかいない。22歳はそこまで落ちる前にアルバイトでも何でも働き場所はいくらでもあるからである。
 最後のところでその原因を知る。頭頂葉に欠陥がある。その結果右左が全くわからない。字を書くと左右が必ず逆になってしまう。く、し、つがコ、レ、ノのようになるのだ。
 字が書けないとなると、働ける職場は殆ど無い。見た目は普通かしっかりしているので、相手は自分を馬鹿にしているのではと疑う。
 どん底の悲しさが、フーテンのようなこれも切ない過去を持つ路子と重なり合って、切々と読者に迫ってくる。

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| 古本読書日記 | 06:19 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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