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山本周五郎  「ならぬ堪忍」 (新潮文庫)

山本周五郎  「ならぬ堪忍」 (新潮文庫)
戦前、まだ周五郎が俵屋宗八というペンネームで発表していたころの作品集。周五郎が出来具合に不満があり、捨てたとした作品を、周五郎を信望する人たちにより発掘された作品集である。従って、作品としては一本調子で、深みには欠けるが、それでも流石と感心してしまうところが、随所にある。
「宗近新八郎」という作品で、上意討ちを決意した新八郎が最後の逢引として、おぬいと2人で尺八と琴の合奏する張りつめた場面の情景は素晴らしい。
 「広縁の障子はすっかり、あけはなしてあるので座敷からさすほのかな燭の光が、雨に濡れる庭の泉石をおぼろげにうつしだしていた。もうこれが梅雨になるのであろう、けぶるような雨は音もなく庭の樹石を濡らし、泉水の水面にあるかなきかの波紋を描いている。琴の音はときにその波紋より幽遠だった。」
 時代物は、その時代をどこまで深く想像でき、それをどこまで忠実に表現できるかで、リアリティが生まれ、物語の優劣が決まる。今、時代物が流行りだが、周五郎の想像力を超える作家はいない。まだ習作の段階だから、ちょっぴり大袈裟な表現になっているが、それでも、ここまでの情景を創造できる周五郎はやはりものすごい作家である。

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| 古本読書日記 | 06:07 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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