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村田喜代子   「光線」(文春文庫)

村田喜代子   「光線」(文春文庫)
短編集。最初の作品「光線」は村田の体験を書いているのだろう。主人公の作家が悪性の子宮癌にかかる。知らなかったが、よほど酷くならない限り、癌は完全に治すことができる。
それが、鹿児島県のK市なる場所にある放射線センターでの特殊な治療により実現されている。患部に一か月間毎日数十分直接放射線をあて、癌細胞を破壊することによってなされているのである。ここにいる放射線技術者は最高度の技術師軍団で、患部以外の場所には99%放射線をあてないように放射することができ、良細胞を破壊しないようにする。
 この方法により、100%近く癌を壊滅させる。
ただこの治療は、保険がきかず、1000万円以上がかかる。まあ、ある階級の人しか受けられない。
 村田はこの治療を受け、悪性癌を克服している。この治療を受けている時、東北大震災がおこる。この大震災で、福島原発が爆発している。何もすることができないから、治療以外の時間、村田はテレビだけを見ていて、その爆発を眺めている。
 一方は1000万円以上もかけて、放射線を使い、死の恐怖から生還する。一方は、放射能を浴び、リンパ線癌にかかり、こんな治療センターの存在も知らず、亡くなっていくひと、生家を追い出され、見知らぬ街や村に避難してゆく人がいる。
 この言葉に尽くせない矛盾が、村田を慟哭させ、物語を紡がせる。

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| 古本読書日記 | 06:22 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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