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盛田隆二  「夜の果てまで」(角川文庫)

盛田隆二  「夜の果てまで」(角川文庫)
人生を振り返ると、何であの時、あんなことをしてしまったのだろうと思う場面がある。あんなことをしてしまったために今の情けない自分があるのだ。
ふつふつと湧き上がる感情だけに突き上げられて行動してしまい、人生の軌道をはずれる。
はずれた軌道は気が付くともう元には戻らない。
 その失敗の最たるものが、駆け落ちである。この小説は、北海道大学生とラーメン屋のかみさんとの駆け落ちを扱う。この北海道大学生、地元の北海道新聞(小説では違う名称)へ、難関を突破し、就職が内定している。それなのに、就職をなげうってまで、ラーメン屋のおばさんと駆け落ちしてしまう。
 読者は馬鹿だなあと思いながら読むが、人生を振り返ると、同じとまでいかないが、似たような経験があったと思わず述懐。あそこで、踏みとどまってよかったなあとため息をつく。
 だから、北海道大学生には共感と反感が、青春のあまずっぱさを添えて、交錯する。
盛田の小説の運びの卓越しているところは、出来事をデフォルメせず、あるがままに描いていること。この話も1990年のころを描くが、そのときの風俗や、出来事をさりげなく装飾としていれているが、作品と実に上手く溶け合っている。これが、他の作家にはできない。なつかしい昭和を書こうとして、頭にある昭和の風景を入れるが、これが溶け合わず宙に浮く作品が非常に多い。
 駆け落ち作品は、古いタイプの作品群にはいり、今はあまり受け入れられないかもしれないが、私は盛田のこの作品は好きだ。

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| 古本読書日記 | 05:54 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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