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柳広司  「吾輩はシャーロック・ホームズである」(角川文庫)

柳広司  「吾輩はシャーロック・ホームズである」(角川文庫)
あの夏目漱石がロンドンに留学していたのは、コナン・ドイルがシャーロック・ホームズを「最後の事件」で宿敵モリアーティ教授とライヘンバッハの滝で格闘し、滝から墜落させ
死なせてしまい、そのホームズを奇跡的に復活させたころだった。
 この作品にはTナツメという日本からロンドンへ留学しているへんちくりんな男が登場する。このナツメ、自分はシャーロックホームズであると信じ切っている。
 その頃、ドイルがホームズを死なせてしまったため、巷では、ホームズを見たとか、ナツメのような自称ホームズがたくさん現れていた。柳はもちろん推理としての面白さもこの小説では盛り込んでいるが、やっぱり、明治時代、ロンドンで官費留学して、孤独にさいなまれていたTナツメこと漱石の心情について愛情をこめて活写している。
 次の柳が作り上げたナツメの言葉には唸った。
「君は澄みきった水の面を泳いだことがあるかい。」「ふと下をのぞき込み、墜落の恐怖をきたす。それが明治を迎えた日本だ。日本はどこにも立つべき場所がない。東洋も西洋もぼくたちをささえてはくれないのだ。」

| 古本読書日記 | 06:39 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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