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大岡昇平  「ザルツブルグの小枝」(中公文庫)

大岡昇平  「ザルツブルグの小枝」(中公文庫)
昭和28年ロックフェラー財団の奨学金を得てのアメリカ ヨーロッパ見聞記。
まだ戦争の爪痕が残っていて、海外旅行など夢物語だったときの一年間にわたる海外旅行記。しかも、最初はアメリカ。戦争で負けてしまった相手国。
 興奮したり落ち込んだり、驚嘆したり、落胆したり、揺れ幅の大きい旅行記を想像していた。最初のアメリカに向けて乗船した客船見聞記には、たしかにそんな描写もあった。そして、アメリカではサンフランシスコからロスと南に下り、そして南回り大陸横断する汽車の旅。冷静でいられるはずがないと読者は思う。
 しかし、全くその期待、想像は裏切られる。それは、大岡が、アメリカ、ヨーロッパの文学、芸術、演劇、そして歴史を深く知っていて、その造詣から、人、街、暮らしを視るからであるである。従って内容は実に濃密で、広く、深い。
 サンタフェのロレンス、ニューオリンズのスタンダール、そしてブロードウェイのシェークスピア。大岡の眼の確かさに感銘する。
 でも、ちゃんとユーモアもはしばしに挿入している。ピッツバーグでの街の見聞は笑いが止まらないくらい。文学の香りあふれる旅行記である。

| 古本読書日記 | 06:15 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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