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佐藤優  「紳士協定」 (新潮文庫)

佐藤優  「紳士協定」 (新潮文庫)
この作品を読むと、作者佐藤は、組織の中では生き抜けない人だと思ってしまう。
佐藤が通った浦和高校というのは、県内随一の進学校であり、バンカラの気風漂う高校だったようだ。その高校で佐藤は複数のクラブに入って活動する。文芸部、新聞部、それから応援部である。新聞部というのは、今はどうかしらないが、過激思想信者の隠れ蓑となっていたクラブである。総括なる言葉が走り回り、年がら年中青臭い議論が口角泡をとばしなされていたクラブである。一方応援部は上位下達が基盤のクラブで、先輩のいうことは理不尽であってもすべて従うクラブである。応援部と新聞部という正反対の気質のクラブにも所属しているのは、かなり異才だ。
 更に大学では驚嘆したのだが「マルクス エンゲルス全集」を何回も繰り返し読んでいるそうだ。読み切ることだけでもすごいが、繰り返しとは精神構造が変わっているし強固だ。
 どうしてこうなるのか、それは何よりも人間とは何かを知りたい、人間にたいし異常に興味を持っていたからである。
 組織というのは、組織の発展のための人間関係は強くしてもよいが、発展を越えた関係については排除しようとする。もちろん、組織勤めを終えても、人間関係は続くかもしれないが、それは組織に属していたときに培われた規範が基盤にある。
 佐藤の強烈な人間探究の想いは、他人をそれで搦めとってしまうこともあるし、搦めとられてしまうこともある。組織内の人間関係は、基本は薄く、互いの領域には踏み込まずである。
 踏み込む佐藤は危ないが逆に、真の人間関係をつくることができる。タイトルにある「紳士協定」の紳士とは、佐藤が外務省新人研修時代にホームステイした家の高校生グレイ君である。
 佐藤26歳、10歳年下のグレイ君との同じ肩を寄せての数々の会話、体験が読者をゆさぶる。素晴らしい作品だと思う。

| 古本読書日記 | 06:07 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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