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高倉健&ピートハミル 「ニューヨークスケッチブック」(河出文庫)

ピートハミル 「ニューヨークスケッチブック」(河出文庫)
「ニューヨークタイムス」で長い間名物男として君臨したコラムニストがピートハミルである。
コラムは、さらさらっとしているが、印象が強く素晴らしいコラムで人気コラムとなった。このコラムの中から選集して出版された本に「ニューヨーク・スケッチブック」(河出文庫)という本がある。
確か最初は34コラムでまとめられる本であったが、もうひとつ無理やり入れられたのが「ゴーイング ホーム」というスケッチコラム。コラムは6ページという短い作品。しかし私は強烈な印象を受けた。
 ニューヨークからフロリダに向かうヤング男性女性6人。そこに、乗り合わせた寡黙で暗い初老男のビンゴ。
色んなスケッチがあるのだが、クライマックス直前にバスが走る中で少女が訪ねる。
「結婚していらっしゃるの?」
「それが、わからないんでね」
「わからないですって?」と少女。
「実は、刑務所から女房に手紙を書いたんだが、長い間、るすにすることになったから、もし辛抱できなかったり、子供たちがしつこく尋ねたりするようなら、そして、とても困るようなら、おれのことは忘れてくれ、と言ってやったんだ。事情が事情だから、再婚しろ、とね--すばらしい女だったよ、ほんとに、りっぱな女房だった--そして、おれのことは忘れてくれとね。手紙はくれなくてもよいと言ってやったら、くれなかったよ、三年半の間ね」
「それなのに、あなたはいま、家に帰ろうとしているの? どうなってるかわからないのに?」
「ああ」とビンゴは恥ずかしそうに言った。「実は、先週、仮釈放されることがはっきりしたので、また手紙を書いたんだ。おれたちが住んでいた町の入口に大きなカシの木があってね。おれが戻ってもいいのなら、その木に黄色いハンカチを結んでおけ、そしたら、おれはバスを降りて家に帰る。戻ってほしくなかったら、忘れてしまってくれ--ハンカチがなかったら、おれはそのまま、降りないで行ってしまう--そう言ってやったんだよ」
ハンカチは皆知っているようにあったよね。これがあの映画の原作。

高倉健が亡くなった。この映画が高倉健の転機になったと言われている。
映像もよかったと思うが、コラムはそれを凌いで素晴らしい。ピートハミル「ニューヨークスケッチブック」を手にして「幸福の黄色いハンカチ」の映画より素晴らしいコラムを文章で堪能してほしい。

| 古本読書日記 | 20:16 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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