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吉田篤弘  「針が飛ぶ」(中公文庫)

吉田篤弘  「針が飛ぶ」(中公文庫)
10センチか20センチ、ほんの少し現実から飛び跳ねる。すると、そこはもう吉田ファンタジーワールド。とびはねることも、ファンタジーワールドを浮遊することに吉田の恣意や
わざとらしさがまったく無く、自然に思う存分読者は吉田ワールドを彷徨する。
 そして、一見バラバラな物語が、最後には見事に一つにまとまり収斂してゆく。
その最後。エルサルバドル君が「ウクレレに触りたい」と言う。それは今まで色んなものに触ってきたがウクレレだけは触ったことが無かったから。もし今触っておかないと、あの世では、目には見えてもすべての物には永遠に触ることができないから。
 週の折り返しの水曜日。今週は何に触ろうかと思いをめぐらす、そして決まったら週末までに何とか触ろうと頑張る。
 そして、クロークに置かれているコートにのっかているポークパイハットに手を入れてみる。「ザラザラ」。またひとつ永遠が無くなる。実に素晴らしい締め。
 それからもうひとつ、素晴らしい本にであった時の読書体験が描かれている。
「とにかく止まらないのだ。いや、ちょっと喉がかわいた。何か飲もう。そう思ったりするのだが。そう思った意識がどんどん本の言葉に支配されてゆく。いやいや待て、待て、少し待て、読むのをやめないと・・・次のセンテンスでひと区切りして・・・そう思っているのに。気付くと、二、三ページがあっという間に過ぎている。」
 本大好き人間の様子がよくでている。

| 古本読書日記 | 06:15 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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