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浅田次郎  「降霊会の夜」(朝日文庫)

浅田次郎  「降霊会の夜」(朝日文庫)
とてもその通りと言えない定説がある。
高度成長時代は、たとえ今は貧乏であっても、明日の豊かな未来が約束されていて、夢や希望に溢れ幸せな時代だった。それに比べ今は、未来は暗く、不安定で陰鬱、不幸が溢れている時代だ。とにかく、昭和礼賛の風潮が今はある。
 1951年生まれの浅田は私と同い年だ。あの時代、土管を住居にしている人がいた。この作品にでてくるような車への当たりやが流行った。それも、この作品のキヨのように子供に当たりをさせた悲劇は毎日のように報道されていた。大きな会社がやる機械化された杭打ちの隣で、ヨイトマケを唄いながら、底辺であえぐ人々が、杭を打っている姿があった。
 浅田がこの作品の最後のところで言う。
「繁栄を目指す騒音は都合がよかった。聞こえていても聞こえないふりを、見えていても見えないふりのできる世の中だった。」
 幸せに見える世の陰に、おびただしい量の不幸があふれかえっていた。あの時代は、それほど良い時代ではなかったと、浅田は言いたかった。それは同い年の私も全く同感である。

| 古本読書日記 | 06:11 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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