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堂場瞬一  「八月からの手紙」(講談社文庫)

堂場瞬一  「八月からの手紙」(講談社文庫)
特に今年になってプロ野球がつまらなくなった。ノーアウト一塁になると、多くの場合バントでランナーを2塁に送る。それはワンヒットで一点が殆ど約束されているからだ。
 ところが、今年の野球は、そういう場面になると、外野が殆ど内野の少し後ろに守る。まるで内野手が7人いるような体形になる。そうなれば、ヒットを打っても、ほとんど2塁ランナーは3塁に止まってしまう。野球の定石が崩れた瞬間だ。その昔は、ワンアウト、ノーアウトで3塁にランナーがいれば、簡単に外野フライがあがり、点数がはいった。ピッチャーが落ちる球をそれほど多投せず、外野フライが打ちやすかったからだ。落ちる球が今は全盛だ。これがテレビから野球ファンを遠ざけた。バッターがホームベース前で弾んだボールをころころ空振りする。テレビで見ると何であんな糞ボールを振るのかと怒りたくなる。急に野球のレベルが下がったように見えてしまう。
 その昔、セリーグとパリーグでは彼我の差があった。何しろパリーグの試合はテレビで見ることは殆どできず、選手名など誰も知っていないのは当たり前、下手をすればチーム名も知らない人がたくさんいた。パリーグの野球は、野球場へ行かなければ見られない時代だった。
 野球場では、観客の数を指を折って数えることができた。ふざけているファンは外野席で麻雀をやっていた。
 ピッチャーゴロを打つ。野球は何がおこるかわからないからなんて理屈は建前。一塁に全力疾走なんてしない。下手をすれば一塁にはむかわず、そのままベンチに向かう。ピッチャーも心得たもので、ボールをショートに投げ、ショートが一塁に放る。ダブルプレーの練習をするわけだ。
 平凡フライがライトにあがる。これをライトがわざと、クラブの土手にあて、はじく。そのはじいた球を地上スレスレでとり、アウトにする。
 戦前まで、アメリカの大リーグは白人しか選手を受け入れなかった。しかたなく黒人は
ニグロリーグを創り戦った。一シーズン100本の本塁打を打つ強打者や、50勝以上あげる
ピッチャーもいた。この作品に登場する、ジョン ギブソンことジョジュ ギブソンこそ
最強の強打者だったし、黒人の中の英雄だった。
 センター前にヒットを打つ。一塁に駆け込む。そこでランナーは、ズボンの後ろのポケットからびんをとりだし、酒をぐいっと飲んでベース上で一息をつく。それがこの作品の物語。
 みすぼらしかったけど、楽しく暖かだったあの頃のパリーグの試合を思い出した。

| 古本読書日記 | 06:16 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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