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池澤夏樹  「クジラが見る夢」(新潮文庫)

池澤夏樹  「クジラが見る夢」(新潮文庫)
 昔は時々観ていた番組で「人生の楽園」という番組がある。都会のぎすぎすした暮らしを離れていかにも幸せ一杯の田舎生活を謳う番組である。
 本当かなあ。わざと楽しいように作っているのではといつも感じていた。画面で幸せ一杯風な人たちのその後を追跡してほしいと思う。田舎にいて、都会に比べ幸せと思える生活が続くとは思えないからだ。
 サウス ケイコスというカリブ海に浮かぶ孤島。文明とは隔絶された人々が暮らす。そこで、世界的な素潜り名人のジャックが言う。
 「安楽だけど贅沢ではない。いいのは家のすぐ前からボートに乗って海にでられること、いつも海の風にあたっていられること、それに周囲に他の家が一軒もないことだ。いずれここに家を完成させて、のんびり暮らす。」
 本当にのんびり暮らすなんてことができるのか。今まで、ちやほやというのは失礼、称賛され仲間に囲まれて気持ちよい暮らしをしていた人間が、周りに家のないところで、のんびり暮らすなどということが。池澤もこんな世界、暮らしを軽軽に理想のように言ってはならない。何よりも池澤自身が口では調子いいことを言っても、そんな世界に住むことなどできない人間なのだから。

| 古本読書日記 | 06:15 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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