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吉村昭  「ポーツマスの旗」(新潮文庫)

吉村昭  「ポーツマスの旗」(新潮文庫)
吉村の歴史物は、本当は歴史を動かしたのに、全く評価されなかったり、むしろ冷遇された人を掘り起し、彼らの実際の業績を活写し、真実の歴史を描くことにその特質がある。
 日露戦争勝利後、日露講和条約締結交渉の日本全権大使として派遣された小村寿太郎。
日露戦争では数十万の戦死者がで、数十億円の戦費を使った。その結果やっと勝利したにも拘わらず、殆どロシアの提示した講和条件を受諾、日本がとれたのは実効支配していた樺太のうちの南半分のみ。
 結果小村は歴史上最低の外交官、外務大臣との烙印を押される。それを白熱の交渉場面を忠実に再現して、小村こそが誠なる外交官であることを吉村は描こうとしている。
 しかし、それはあまり成功しているとは思えない。小村は結局交渉決裂を決断し、日本への帰国の準備をしていた。交渉決裂ということは、日露戦争が継続されることを意味している。ということは更なる戦死者と、更なる戦費が発生するということを決断したということである。それを止めたのは当時の日本政府。ロシアとの戦争は、次は負けるだろうし、おびただしい犠牲者をだすだろうという情勢を判断し決めたこと。
 吉村の小村への感情移入は、吉村の本来の想いと現実は完全に解離し、物語は破綻している。


by はなゆめ爺や

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| 古本読書日記 | 06:13 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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