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吉村昭   「落日の宴」 (講談社文庫)

吉村昭   「落日の宴」(上)(講談社文庫)
吉村昭   「落日の宴」(下)(講談社文庫)
吉村昭の「落日の宴」が新装版で最近講談社文庫より出版された。歴史は常に勝者の側が正義として語られる。特に明治維新は竜馬から始まり伊藤博文、大久保利通、西郷隆盛らが維新功労者として教科書にものり絶賛されている。
徳川幕府はそれほど悪い時代だっただろうか。少なくとも250年以上に渡り、他国と戦争をして犠牲者をだしたことはなかった。唯一、維新の原動力となった薩摩藩が英国艦隊と戦い、犠牲者を多数だしただけだ。
 特に幕末の世界の状況は厳しかった。中国はイギリスをはじめ、列強に蹂躙されていたし、アジアの他の国々も植民地と化し、おびただしい犠牲者をだしていた。更に、欧州ではクリミア戦争が勃発、緊張状態にあった。
 こんな中で、アメリカ、ロシア、フランス、イギリスが日本にやってきて、武力を背景に国交を日本にせまった。もし戦争になったら、日本は瞬間で破壊される。武力には彼我の差があった。全く日本は抑止力はもっていなかった。
 こんな中で、幕府の官吏、老中は地をはうような交渉をした。一歩間違えれば多数の犠牲者とともに、列強の植民地にされていた。しかし、彼らの敢然とした交渉により、日本は戦争にまきこまれることなく、明治を迎えた。
 明治維新の薩長政府は富国強兵、軍備を拡大して、その力を背景にして交渉を進める方向に突き進んだ。軍備増強が戦争抑止力になるはずであった。それは薩長勢力が自らの権益を拡大するためでもあった。結果、日清、日露の戦争に続き、最後は大戦で数百万の日本人が命を無駄に落とした。本当に維新の英雄は素晴らしかったのか。疑問大である。
 抑止力を持たず、交渉、外交力だけで日本を守りぬいた、幕府の要人の力は尊敬に値する。しかし、これらの素晴らしい人々は歴史から完全に抹殺されてしまっている。
 集団的自衛権の確立をする前に、もういちど吉村の「落日の宴」を安倍首相は読んでほしいと心底痛感する。
吉村の「落日の宴」まったく時宣にかなった出版である。是非多くの人に読んでほしいと願うものである。


by はなゆめ爺や

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